『梶村秀樹著作集』完全復刊をめざす会・第6支部[ハンバンパク!!!]

名は体をあらわす。伝説の歴史家・梶村秀樹先生(1935年~1989年)の著作集の完全復刊をめざす会です。ほかにも臨時でいろいろ。

1973-01-01から1年間の記事一覧

「アンナ・カレーニナ」3-16~3-20(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一六[#「一六」は中見出し] どの部屋もどの部屋も、庭番や、園丁や、下男たちが、荷物を運び出しながら歩きまわっていた。戸棚や箪笥は開け放しになっていた。二度も近所の小店へ、使が紐《ひも》を買いに駆け出した。床には新聞紙がちらか…

「アンナ・カレーニナ」3-11~3-15(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一一[#「一一」は中見出し] 七月の中旬、ポクローフスコエから二十露里はなれた姉の村の組頭が、農園の状態や草刈りの報告を持って、レーヴィンのところへやってきた。姉の領地のおもな財源は、川添いの草場からあがる収入であった。ずっと…

「アンナ・カレーニナ」3-06~3-10(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]六[#「六」は中見出し] マーシキン・ヴェルフは刈り終えられた。人人は最後の幾筋かを仕上げたのち、長上衣《カフタン》を着こみ、にぎやかに家路へ向った。レーヴィンは馬に乗って、名残り惜しく百姓たちに別れを告げ、邸の方へ馬を進めた…

「アンナ・カレーニナ」3-01~3-05(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#2字下げ]第三編[#「第三編」は大見出し] [#5字下げ]一[#「一」は中見出し] セルゲイ・イヴァーノヴィッチ・コズヌイシェフは、知的労働に疲れた頭を休めたいと思って、いつものように外国へ行くのをやめ、五月の終りに義弟の持ち村へやって…

「アンナ・カレーニナ」2-31~2-35(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]三一[#「三一」は中見出し] 天気模様の悪い日で、午前ちゅう雨が降っていた。病人たちは傘を持って、廻廊に群がっていた。 キチイと母夫人は、モスクワの大佐といっしょに散歩していた。大佐は、フランクフルトで買った既成品の、ヨーロッ…

「アンナ・カレーニナ」2-26~2-30(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二六[#「二六」は中見出し] 妻に対するカレーニンの態度は、外面から見ると、もとのとおりであった。たった一つ違ってきたのは、彼が前よりもっと多忙になったことである。前年と同じように、春になると共に、冬のあいだ毎日毎日懸命に働く…

「アンナ・カレーニナ」2-21~2-25(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二一[#「二一」は中見出し] 臨時厩舎になっている木造のバラックは、競馬場のすぐわきに建てられており、そこへ昨日のうちに、彼の馬が連れてこられているはずであった。彼はまだ馬を見ていなかった。この二三日、彼は自分で乗らないで、調…

「アンナ・カレーニナ」2-16~2-20(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一六[#「一六」は中見出し] 家へ帰る道々、レーヴィンはキチイの病気と、シチェルバーツキイの計画について詳細のことを、一つ残らずききだした。そんなことを認めるのは、われながら良心が咎めたけれども、彼はそれを聞いて気持がよかった…

「アンナ・カレーニナ」2-11~2-15(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一一[#「一一」は中見出し] ほとんどまる一年の間、ヴロンスキイにとっては、それまでのあらゆる欲望の代償となって、生活の唯一無二ともいうべき絶対的な希望を作りなしていたもの、またアンナにとっては考えることもできないほど恐ろしい…

「アンナ・カレーニナ」2-06~2-10(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]六[#「六」は中見出し] 公爵夫人ベッチイは最後の幕を見ないで、劇場を出てしまった。彼女が化粧室へ入って、その長い蒼ざめた顔に白粉をはき、それをさっと拭《ふ》きとって、身じまいをなおし、大きいほうの客間へ茶を出すように命じるか…

「アンナ・カレーニナ」2-01~2-05(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#2字下げ]第二編[#「第二編」は大見出し] [#5字下げ]一[#「一」は中見出し] 冬の終りのころ、シチェルバーツキイ家では医師の立会診察が行われた。それは、キチイの健康がどういう状態にあるか、また彼女の衰えいく体力を回復するにはどうし…

「アンナ・カレーニナ」1-31~1-34(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]三一[#「三一」は中見出し] ヴロンスキイはその夜、夜っぴて眠ろうともしなかった。彼は自分の席に腰かけたまま、時にはじっと前方に眼をそそいだり、出入りする人を見まわしたりしていた。前から彼は、泰然|自若《じじゃく》とおちつきす…

「アンナ・カレーニナ」1-26~1-30(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二六[#「二六」は中見出し] 翌朝、コンスタンチン・レーヴィンはモスクワを発《た》って、夕刻、自分の村へ帰り着いた。道々、汽車の中で、隣席の人々と、政治のことだの、新しい鉄道のことだのを話しあったが、またしてもモスクワにいた時…

「アンナ・カレーニナ」1-21~1-25(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二一[#「二一」は中見出し] 大人たちのお茶の時間になると、ドリイは自分の部屋から出てきた。オブロンスキイは姿を現わさなかった。きっと妻の居間を裏口からぬけだしたに相違ない。 「わたしね、二階じゃあんた寒くないかと思って」ドリ…

「アンナ・カレーニナ」1-16~1-20(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一六[#「一六」は中見出し] ヴロンスキイはかつて家庭生活というものを知らなかった。母親は若いとき光まばゆいばかりの社交婦人で、結婚してからも、ことに寡婦《やもめ》になってから、かずかずのローマンスをつくっては、社交界に浮名《…

「アンナ・カレーニナ」1-11~1-15(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一一[#「一一」は中見出し] レーヴィンは盃を飲み干した。二人はしばらく黙っていた。 「もう一つ、君にいっておかなきゃならんことがある。君はヴロンスキイを知ってるかい?」とオブロンスキイは、レーヴィンに問いかけた。 「いや、知ら…

「アンナ・カレーニナ」1-06~1-10(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]六[#「六」は中見出し] オブロンスキイに、いったいなんの用で来たかときかれた時、レーヴィンは顔を真赤にし、その顔を赤くしたことに対して自分で自分に腹を立てたが、それはほかでもない、『僕は君の義妹に結婚を申しこみに来たのだ』と…

「アンナ・カレーニナ」1-01~1-05(『世界文學大系37 トルストイ』1958(昭和33)年8月10日発行、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

アンナ・カレーニナ Анна Каренина トルストイ 米川正夫訳 - 【テキスト中に現れる記号について】《》:ルビ (例)良人《おっと》|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)三千|町歩《デシャチーナ》[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の…