『梶村秀樹著作集』完全復刊をめざす会・第6支部[ハンバンパク!!!]

名は体をあらわす。伝説の歴史家・梶村秀樹先生(1935年~1989年)の著作集の完全復刊をめざす会です。ほかにも臨時でいろいろ。

『アンナ・カレーニナ』第二編

「アンナ・カレーニナ」2-31~2-35(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]三一[#「三一」は中見出し] 天気模様の悪い日で、午前ちゅう雨が降っていた。病人たちは傘を持って、廻廊に群がっていた。 キチイと母夫人は、モスクワの大佐といっしょに散歩していた。大佐は、フランクフルトで買った既成品の、ヨーロッ…

「アンナ・カレーニナ」2-26~2-30(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二六[#「二六」は中見出し] 妻に対するカレーニンの態度は、外面から見ると、もとのとおりであった。たった一つ違ってきたのは、彼が前よりもっと多忙になったことである。前年と同じように、春になると共に、冬のあいだ毎日毎日懸命に働く…

「アンナ・カレーニナ」2-21~2-25(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二一[#「二一」は中見出し] 臨時厩舎になっている木造のバラックは、競馬場のすぐわきに建てられており、そこへ昨日のうちに、彼の馬が連れてこられているはずであった。彼はまだ馬を見ていなかった。この二三日、彼は自分で乗らないで、調…

「アンナ・カレーニナ」2-16~2-20(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一六[#「一六」は中見出し] 家へ帰る道々、レーヴィンはキチイの病気と、シチェルバーツキイの計画について詳細のことを、一つ残らずききだした。そんなことを認めるのは、われながら良心が咎めたけれども、彼はそれを聞いて気持がよかった…

「アンナ・カレーニナ」2-11~2-15(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一一[#「一一」は中見出し] ほとんどまる一年の間、ヴロンスキイにとっては、それまでのあらゆる欲望の代償となって、生活の唯一無二ともいうべき絶対的な希望を作りなしていたもの、またアンナにとっては考えることもできないほど恐ろしい…

「アンナ・カレーニナ」2-06~2-10(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]六[#「六」は中見出し] 公爵夫人ベッチイは最後の幕を見ないで、劇場を出てしまった。彼女が化粧室へ入って、その長い蒼ざめた顔に白粉をはき、それをさっと拭《ふ》きとって、身じまいをなおし、大きいほうの客間へ茶を出すように命じるか…

「アンナ・カレーニナ」2-01~2-05(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#2字下げ]第二編[#「第二編」は大見出し] [#5字下げ]一[#「一」は中見出し] 冬の終りのころ、シチェルバーツキイ家では医師の立会診察が行われた。それは、キチイの健康がどういう状態にあるか、また彼女の衰えいく体力を回復するにはどうし…