1973-04-01から1ヶ月間の記事一覧
[#5字下げ]二一[#「二一」は中見出し] ベッチイが広間を出るか出ないかに、新しい牡蠣《かき》の入ったエリセエフの店へ行って、そこからやってきたばかりのオブロンスキイに、戸口でぱったり出会った。 「ああ! 公爵夫人! これはいいところでお目…
[#5字下げ]一六[#「一六」は中見出し] 公爵夫人は無言のまま微笑しながら、肘椅子に腰をかけていた。老公はそのそばへ腰をおろした。キチイはいつまでも父の手を放さないで、その椅子のかたわらに立っていた。みんな黙っていた。 やがて公爵夫人が第…
[#5字下げ]一一[#「一一」は中見出し] 一座のものはだれもみな、この会話に仲間入りしていたが、キチイとレーヴィンだけは別であった。はじめ、一つの国民の他国民に対する影響力という問題が出たとき、レーヴィンはこの問題について、いうべき意見を…
[#5字下げ]六[#「六」は中見出し] カレーニンは八月十七日の委員会で、はなばなしい勝利を博したが、その勝利の結果が彼を裏切った。異民族の生態をあらゆる点において研究すべき新しい委員会は、カレーニンの督促によって、目ざましい早さと意気ぐみ…
[#2字下げ]第四編[#「第四編」は大見出し] [#5字下げ]一[#「一」は中見出し] カレーニン夫婦は、ひきつづき一つ家に暮して、毎日顔をあわせていたけれど、お互に全くの他人同士であった。カレーニンは、召使に揣摩臆測《しまおくそく》の権利…