『梶村秀樹著作集』完全復刊をめざす会・第6支部[ハンバンパク!!!]

名は体をあらわす。伝説の歴史家・梶村秀樹先生(1935年~1989年)の著作集の完全復刊をめざす会です。ほかにも臨時でいろいろ。

『アンナ・カレーニナ』第三編

「アンナ・カレーニナ」3-31~3-32(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]三一[#「三一」は中見出し] 階段を半分ほど駆けおりたとき、彼は控室でなじみのある咳の声がするのを聞きつけた。しかし、自分の足音にまぎれて、はっきりとは聞えなかったので、まちがいであってくれればとねがった。が、つづいてなじみの…

「アンナ・カレーニナ」3-26~3-30(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二六[#「二六」は中見出し] スヴィヤージュスキイは、自分の郡の貴族団長をしていた。彼はレーヴィンより五つ年上で、ずっと前に結婚していた。彼の家には細君の妹で、レーヴィンの好ましく思っている若い娘がいた。そして、スヴィヤージュ…

「アンナ・カレーニナ」3-21~3-25(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二一[#「二一」は中見出し]「僕は君を迎えに来たんだよ。今日は洗濯がばかに長かったじゃないか」とペトリーツキイがいった。「どうだい、もうすんだかい?」 「すんだよ」とヴロンスキイは、目だけで笑いながらそう答えて、口髭の先を用心…

「アンナ・カレーニナ」3-16~3-20(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一六[#「一六」は中見出し] どの部屋もどの部屋も、庭番や、園丁や、下男たちが、荷物を運び出しながら歩きまわっていた。戸棚や箪笥は開け放しになっていた。二度も近所の小店へ、使が紐《ひも》を買いに駆け出した。床には新聞紙がちらか…

「アンナ・カレーニナ」3-11~3-15(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一一[#「一一」は中見出し] 七月の中旬、ポクローフスコエから二十露里はなれた姉の村の組頭が、農園の状態や草刈りの報告を持って、レーヴィンのところへやってきた。姉の領地のおもな財源は、川添いの草場からあがる収入であった。ずっと…

「アンナ・カレーニナ」3-06~3-10(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]六[#「六」は中見出し] マーシキン・ヴェルフは刈り終えられた。人人は最後の幾筋かを仕上げたのち、長上衣《カフタン》を着こみ、にぎやかに家路へ向った。レーヴィンは馬に乗って、名残り惜しく百姓たちに別れを告げ、邸の方へ馬を進めた…

「アンナ・カレーニナ」3-01~3-05(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#2字下げ]第三編[#「第三編」は大見出し] [#5字下げ]一[#「一」は中見出し] セルゲイ・イヴァーノヴィッチ・コズヌイシェフは、知的労働に疲れた頭を休めたいと思って、いつものように外国へ行くのをやめ、五月の終りに義弟の持ち村へやって…