『梶村秀樹著作集』完全復刊をめざす会・第6支部[ハンバンパク!!!]

名は体をあらわす。伝説の歴史家・梶村秀樹先生(1935年~1989年)の著作集の完全復刊をめざす会です。ほかにも臨時でいろいろ。

「米軍と農民 沖縄県伊江島」(米軍と農民 沖縄県伊江島) メモ 1973年8月20日初版

米軍と農民 沖縄県伊江島

Ⅰ 伊江島・真謝とわたし 001
 1 伊江島・真謝の歴史 002
   真謝原ぬ芋や
   真謝の始まり
   真謝の人たち
   真謝の反骨精神
 2 わたしの生い立ちと真謝 006
   激しい男女差別
   下駄に拾って入学
   キリスト教に入ったきっかけ
   キューバへ移民
   ペルー
   一燈園を訪ねる
   理想の場所
   変人扱い
   激戦地伊江島
   一人むすこも戦死
   ようやく真謝に帰って
Ⅱ 真謝の農民と陳情規定 019
 1 土地問題の発端 020
    後藤二世
    四軒の立退き
    米軍の通告
    米軍との会談
    琉球政府に陳情
    真謝区民の訴え
    対策協議
    赤インクの書きこみ
    村ぐるみの問題に
    弾丸もこわくない
    対照的な服装
    陳情心得
 2 米軍との会談 035
    陳情の日が来た
    農民の凝視
    天に通じたのか
 3 陳情規定 040
    鬼畜と人間
    軍の土地係シーハン
    なにか裏が
    ”妨害”の真相
    不安と希望と
    ラビットと卵
    ”挨拶しよう”
    ”耳より上に手を上げない”
    これからの方針
    みんなでつくった陳情規定
    無抵抗の抵抗
Ⅲ 迫りくる破局 055
 1 ”ちび(尻)と口とは結ばぬ話” 056
    全部が代表
    鎌を捨てる
    軍とのやりとり
    政府一行の来島
    不穏の空気
    カックス判事とのやりとり
    おもしろい話でも
    猿顔に笑み
 2 読めてきた軍の肚 066
    迫ってきた立退き
    さし迫った情勢
    米軍のずるさ
    火の玉の真謝
    まだ手さぐり
    Y通訳を訪問
    風呂屋で眠り
    シャープ少佐を訪問
    ”豆腐に釘”
 3 農民がおかれた立場 073
    どこに訴えたらいいか
    陳情書をつくる苦労
    孤独感
    小禄村の経験
    軍の最後通告
Ⅳ 襲ってきた米軍 085
 1 一九五五年三月十一日 086
    三〇〇人の武装米兵
    縛られた並里老人
    屈辱の日
    ブルドーザーの爪
    テント幕舎
    生命の危機
    耕作を強行
    燃える山林原野
    悪魔はいる!
 2 琉球政府に坐り込む 097
    ヘリで帰された村長
    坐り込み開始
    頭を下げる警官
    気狂いには会わない
    ジョンソン民生官
    悪魔の声
    無力な任命政府
 3 ”助きやいたぼり衆人万人” 104
    幕舎の中の琉歌
    母国の皆さまへ
    米兵との問答
    押しかけた家族
 4 当時のナマの記録 118
    常会決議
    せまる餓死
Ⅴ 乞食行進 125
 1 乞食させるのは誰か 126
    明日から乞食する
    堂々とした乞食
    白布に書いた訴え
    涙を流す婦人
 2 金網撤去 133
    自発性が八分
    たたかいと実益と
 3 今村賢男君の逮捕・投獄 135
    お婆さんの嘆息
    法廷を試しに来たのか
 4 激励のかずかず 138
    沖縄教職員会
    沖縄の太陽
    ”悪魔アメリカや”
Ⅵ 米軍と農民の根気くらべ 143
 1 軍会談にあたっての心構え 144
    たたかいの概観
    真謝の建設
    根気くらべ
    土地協の結成
    ”犬は汚いものを食べる”
    軍会談の心構え
 2 つづく逮捕・投獄 154
    危うく命びろい
    陳情書
    米兵に盗まれた夫
    移動式立札
 3 生活が楽になった土地契約拒否の農民 158
    狼は狼
    いかなる契約にも反対
    心の強い人、弱い人
 4 二青年の爆死 162
    若妻は訴える
    悲しみをこらえて
    高笑いする米兵
 5 軍の新たな決意 170
    一九六〇年を迎えて
    六〇年のおもな事件
    平安山君即死
Ⅶ 訪れてきた転機 175
 1 伊江島土地を守る会 176
    転機のきざし
    米軍の返事
    われわれの返事
    米軍へ”最後通告”
    根気くらべ
    土地を守る会の結成
    赤字にならない
 2 伊江島の学習活動 183
    頼りになるのは自分たち
    守る会の学習
    一燈園にも送る
    中央労働学院に入学
 3 ベトナム戦争伊江島 190
    ベトナム北爆前夜の伊江島
    世界には大きな耳
    スクラップを売りにくる米兵
    泣いて別れる米兵
    ベトナムと心は一つ
 4 伊江島からミサイルを追い出す 197
    たたかいの転機
    何かあるねえ
    しょんぼりしたファージョン大佐
    ミサイルすれすれに坐り込む
 5 団結道場の建設 201
    全沖縄土地を守る会
    爆音のテープ
    受身からの脱皮
    団結道場建設の目的
    起工式と武装
    コーヒーを出せ
    ハト派なら兄弟
    本土からの支援
    道場完成

あとがき 217
阿波根さんと私(牧瀬恒二) 223

P29―P30
    赤インクの書きこみ
当時わたしが綴った記録をいま読みなおしてみますと、事実を書いた行間に赤インクで書きたしてあります。すぐ書いたのか、あとで書きたしたのかは記憶しておりませんが、いずれにしても書いておかなければいけないこと、ぬけていてはいけないことであります。
 たとえば同じ十月八日午後四時渡久地《とぐち》発の村有船伊江丸で、琉球政府内政局長宮里勝氏、行政課長|野波《のは》棟次郎氏、同主事仲本朝意氏、庶務課長|嘉数《かかず》三郎氏、その他沖縄タイムズ、琉球新報など報道関係の方々が来島し、○コ旅館で大城村長や両区民と懇談していますが、内政局長のあいさつを記録した行間に赤インクでつぎのように書きこんであります。
「少しも誠意同情のない形式的挨拶であった。」
 つぎの野波課長あいさつの要旨は、全部赤インクで書いてあります。
「皆様のお気持ちはよくお察しできます。御同情にたえません。お慰めのことばもありません。こうした不幸の因をただせば、その罪は戦争にあると思います。政府も十分できるだけのことはして上げたいと思いますが、皆さまも今おかされている政府の立場をよく理解して下さい。さきほどもらい泣きとお叱りを受けましたが、本心であります。失礼いたしました。皆さんのお願いを正直に主席に申し上げます。お大事になさいませ。」
 もらい泣き云々とは、政府に不満を感じた真謝区の石川■■さんが、「課長はもらい泣きをされることはいらない、正直に主席と軍に訴えて立退きの中止を計って下さい」と怒鳴ったのに対して、野波課長は「それは本心であります」と半ば本心、半ばいいのがれをいったのでした。


P50―P51
    ”耳より上に手を上げない”
そのあと午後一時すぎ、両部落の二十数名の有志が西崎区の大城■■氏宅に集まり、いままでの体験をもとにしてみんなが守らなければならない「陳情規定」をつくり、また明日からの陳情方針について話し合いました。
    陳情規定
一、反米的にならないこと。
一、怒ったり悪口をいわないこと。
一、必要なこと以外はみだりに米軍にしゃべらないこと。正しい行動をとること。ウソ偽りは絶対語らないこと。
一、会談のときは必ず坐ること。
一、集合し米軍に応対するときは、モッコ、鎌、棒切れその他を手に持たないこと。
一、耳より上に手を上げないこと。(米軍はわれわれが手をあげると暴力をふるったといって写真をとる。)
一、大きな声を出さず、静かに話す。
一、人道、道徳、宗教の精神と態度で接衝し、布令・布告など誤った法規にとらわれず、道理を通して訴えること。
一、軍を恐れてはならない。
一、人間性においては、生産者であるわれわれ農民の方が軍人に優っている自覚を堅持し、破壊者である軍人を教え導く心構えが大切であること。
一、このお願いを通すための規定を最後まで守るかも。
 右誓約いたします。
 一九五四年十一月二十三日
    真謝、西崎全地主一同(署名捺印すること)