『梶村秀樹著作集』完全復刊をめざす会・第6支部[ハンバンパク!!!]

名は体をあらわす。伝説の歴史家・梶村秀樹先生(1935年~1989年)の著作集の完全復刊をめざす会です。ほかにも臨時でいろいろ。

『シュン@ひろしまタイムライン』の検証――1945年8月15日-1945年8月16日との比較(追記あり)

NHK広島が事件をおこした。
誰が見ても明確な差別扇動ツイート(朝鮮人に対して)をした、という事件である。かつ、ツイートとその元となった日記の記述との不一致が指摘されている。
以下の記事がまとまっている。
 
「シュン@ひろしまタイムライン」についての朝鮮人記述と実際の「日記」との比較 - 電脳塵芥
 
さて、いろいろと関連記事を読んでみたのだが、2020年8月26日18時の時点で、元になった2つの日記を所有している人を見つけることができないらしい。
そこで、外堀を埋めるために、他の『シュン@ひろしまタイムライン』と元になった日記(NHKホームページにて公開、ただし一部のみ)を比較してみることにした。
こういう事件が起きていたら、ほかのところでも問題があると思え、というのは、とても役に立つ経験則である。
正直、全部の比較はできない。ほかの人も比較作業をやってほしい。

1945年8月15日-1945年8月16日

「もし75年前にSNSがあったら?」1945年、広島の中学1年生だった新井俊一郎さんの日記原文(1945年8月15~16日) | 被爆75年ブログ|NHKブログ

8月15日(水) 晴 「日本降伏か」、陛下ラジオ放送 起床五時半、就床九時
 我の一生の中にて今日ほど驚き、大いに憤慨した日はなかった。ああ遂に我が國が敵米英ソに降伏したらしいのである。何たる事か、紀元二千六百五年の輝かしい発展は、たうたう、本年本月本日、遂に汚されたのである。ああ残念なる事である。最後の勝利は我に有りといふのは、遂に出来なかった。独や伊は、日本より以上に頑張った訳である。兵隊は地団駄ふんでゐることであらう。
 正午の報道の時に我が今上陛下には、ラジオに於いて我が国が講和するに至った事を述べられ、国民の決心をうながしてゐられる。今の所は休戦であるらしいのである。實に残念である。日本破る、か、無念なり。最後の最後まで戦ひ抜くと思ったのに。しゃくに触る。しかし陛下の御命令なのである。平静を保持しやうではないか。

8月16日(木) 晴後曇 『平和交渉は確実』不思議な爆鳴聞こゆ。共同生活停止か。
 昨日の、我が国は平和交渉が成立したことは、遂に本当であった。農業会前にも西条警察署長が「戦争は終った」と張り出してあった。それに昨晩のラジオを我は聞いた。やはり確実であった。ああ、紀元二千六百年の輝かしき歴史は、遂に汚されたのである。
 今日も出動はない。兵隊さんは大騒ぎをしてゐるらしい。西本君の話では、将校が真っ青になって自転車を飛ばしてゐたさうである。
 夕方、北の方(廣島ではない)に大きな入道雲と、煙のやうな雲が出て、爆鳴らしき音がドロドロと聞こえる。不思議だ。また米英ソがやってゐるのか、また我が方が自爆してゐるのか。
 田中先生は、米英等の下になったら共同生活は停止されるやもしれぬ、とのお話であった。長田と戸田、帰省して帰へる。

 


 

【1945年8月15日】

本日は正午より重大放送があるとのことだ。
皆農協の前庭に集まって聞く。

そろそろだ。教官達がいつになく騒然とされている。
少し緊張してきた。

これが陛下の御声か。
雑音が多くてよくわからない。我々への激励の詔勅だろうか?

結局何の放送だったんだ?

教官がひどく慌てて何ごとか話している。

まさか、本当に?

無念

最後まで戦い抜くのではなかったのか、最後の勝利は我にあり、というのではなかったのか
今のところは休戦であると陛下が仰ったらしい。
無念なり。

兵隊は地団太を踏んでおるだろう。
僕もしゃくに障るが陛下の御命令なのである。
平静を維持せねばならぬ。

そういえば、「日本は決して負けない。もし負けたら腹を切る」と言っていた修身の教官はどうするだろう。
やはり腹を切るか?

未だ腹は切っていないようだ。
切らないのだろうか?

みんなで教官室を覗いてみた。
腹、切らないのだろうか?

【1945年8月16日】

日本は負けた。まだ信じられない。
誰かがしきりに「コペルニクス的転回」と言っていた。 まったくだ。

農業会前に、西条警察署長の「戦争は終わった」という張り出しが。
昨日のラジオ。僕は確かに聞いた。
やはり平和交渉が成立したことは本当だった。

紀元二千六百年という輝かしき歴史は遂に汚されたのだ!

ん?入道雲だ。
爆音と共にどんどん大きくなる。
また米英ソがやってくるのか!それとも我が方が自爆しているのか。
田中先生は米英等の下になると、共同生活は停止されるかもしれぬと言われていた。

 
 
 
1945年の人間がツイートをしている、という設定だとすると不自然なところがあるが、そこはおいておく。
すぐ気がつく問題点が2つある。
1つめ、「修身の教官はどうするだろう。」に関する記述は、引用された日記(NHKホームページにて公開)にはない。これでは、日記を書いた人物の人物像が誤解されてしまう。正直、ここだけでも「資料の不適切使用」で問題になるのではないか。
2つめ、「コペルニクス的転回」という単語は、引用された日記にはない。まさかとは思うが、最近また売れ出した『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)のなかの単語をよく考えずにここで使ったのではないか? ここも不適切な単語への翻訳ではないだろうか? わたしの知っている例だと、東部ニューギニアにで敗戦をむかえた飯田進氏は、たしか「地球の自転が止まったような気がした」という表現をしていた。以下の本を読んでほしい。
ぼくらはアジアで戦争をした | 著:内海愛子 | 無料まんが・試し読みが豊富!ebookjapan|まんが(漫画)・電子書籍をお得に買うなら、無料で読むならebookjapan

まさか、疑惑のある点が2点、すぐにみつかるとは思わなかった。
こちらもいそがしいので、不定期で検証をつづけることにする。