『梶村秀樹著作集』完全復刊をめざす会・第6支部

名は体をあらわす。伝説の歴史家・梶村秀樹先生(1935年~1989年)の著作集の完全復刊をめざす会です。

『A3』(森達也)への検証:資料集その2 新実智光氏・3つのVX襲撃事件(1994年12月2日~1995年1月4日)について

注:2019年08月01日、「新実智光被告」を「新実智光氏」に変更。被害者のかたがたには不愉快きわまりないだろうが、私には新実氏とこの事件が他人事にはおもえない。


以下、『オウム「教祖」法廷全記録』第七巻より引用。

■第204回公判

(略)
 10時に開廷し、新実被告が宣誓した。
検察官「Mさん、Nさんの殺人未遂事件で起訴されていますか」
証人「はい」
検察官「関与していますね」
証人「はい」
 新実被告ははっきりした口調で答える。新実被告が松本被告の指示を証言するにつれ、「お前には見えてない」「破門だ」などと、松本被告の不規則発言が激しくなった。
検察官「どのような指示がありましたか」
証人「Mさんの件で、信者のお布施の返還請求はMさんが入れ知恵している。趣旨として、VXをかけてポアしろと。当時はVXとは直接言わずに、神通とか神通力とか使われたと思います」
 「恥じないようにしろ」と松本被告が声を上げた。
証人「そうすれば、信者の親子は目覚めてオウムに戻ってくるだろうということでした」
検察官「ほかに記憶していることは」
(略)
証人「ヴァジラヤーナ(金剛乗)の実践は村井(秀夫元幹部・故人)さんがナンバー1《ナンバーワン》で、松本サリン事件までは私がナンバー2、VX事件を機に井上さんと(私の)立場が逆転した。(役割を供述すれば)井上さんがナンバー2たったことが明確になる。地下鉄サリン事件で井上さんが村井さんと総指揮を担っていたことが明確になれば、井上さんは死刑を免れないと思い、井上さんをかばいました」(略)

「神々の世界に行くにはポアしまくるしかない」

 新実被告の証言では、Mさんが入院したことを松本被告に電話で報告すると、松本被告は「神々の世界に行くにはポアしまくるしかない」と言ったという。
 尋問はN会長の事件に移った。
検察官「実行は誰が決めたのか」
証人「麻原尊師。どんな方法でもいいから、NさんにVXをかけろと言われた。いくら金を使ってもいいからと」
検察官「犯行の結果を報告したか」
証人「はい」
検察官「どんな内容だったか」
証人「数時間で救急車が来て、多分、慶応病院に入院しましたと」
検察官「松本被告は何か言っていたか」
検察官「ポアできなくても成功だなと言っていました」


■第211回公判

(略)
江川紹子さんをホスゲンで攻撃

 1時16分、再開。
 松本被告らが94年9月、教団を批判していたジャーナリストの江川紹子さんと滝本太郎弁護士を毒ガスのホスゲンやVXで狙った経緯について弁護人が聞いた。
弁護人「謀議には誰がいたのか」
証人「私、尊師、遠藤(誠一被告)さん。中川さんもいたんじゃないか」
(略)
弁護人「麻原さんは滝本弁護士を殺さねばならないと言っていたのか」
証人「そういったことを聞いたことはない」
弁護人「VXに関する知識を村井(秀夫元幹部・故人)さんから聞いた状況は」
証人「(94年)8月か9月。第6サティアンだったと思う。2人だけの時、『神通(教団内で使われていたVXの隠語)を作るために材料を調達してほしい』と言われた」
弁護人「(94年6月に)松本サリン事件があり、警察が化学薬品を捜査していることは分かっていましたね」
証人「はい」
弁護人「そういう状況下で、オウムがVXにかかわると危険だという認識はなかったのか」
証人「サリンについてはいろいろ捜査されていて危険だが、それに代わるホスゲンとかVXとか、違うものを開発しようとしていたのではないか」
(略)
弁護人「主尋問では、(VXの完成について)麻原さんから聞いたことになっている。
具体的な言葉は」
証人「神通力ができたという言葉だったと思う」
弁護人「どういう状況で」
証人「(94年)9月中旬。第6サティアンー階の尊師の部屋で、私と尊師と遠藤さんの3名」
弁護人「どう思ったの」
証人「できた神通力で何らかの実行行為をするんだと思いました」
弁護人「教団への強制捜査の話が出ている時に危険という認識はなかったのか」
証人「むしろ逆かもしれませんね。だからこそ、目立つ活動をしている人に行動を起こすのかなと思いました」



■第212回回公判

「在家の警察官から強制捜査の情報」

(略)
弁護人「麻原さんは、VXがどういう状態か知らなかったのか」
証人「そうでしょうね」
(略)
 尋問は、1994年11月ごろに警察が教団を強制捜査するという情報が入った状況に移った。
弁護人「11月以前の段階から強制捜査は話題になっていたか」
証人「強制捜査が近いうちにあるかもしれないという話だった」
(略)
弁護人「相当確実な情報と思っていたか」
証人「警察が来るかもしれない、というあいまいな情報だった」
弁護人「隠すと決定したのは誰か」
証人「最終的には尊師ということになる。警察に発覚するとまずいものは隠した方がいいと決めた。何かまずいかは各部署の判断に任せた」
(略)
弁護人「Mさんに対し、そこまでしなくてもいいという意識はなかったか」
証人「その当時はありませんでした」
弁護人「当然だと思っていた?」
証人「当然とも思わないし、そこまでやる必要はないとも思わなかった。素直に言われた通りやろうと思った」
弁護人「Mさんがポアされて、信者はどうなると思ったか」
証人「信者の親子は目が覚めてオウムに戻ってくると信じた」
弁護人「民事訴訟はどうなると思った」
証人「信者の親子が(教団に)帰ってくれば、Mさんが死ねば、民事訴訟はなくなると思った」
 正午、休廷。
(略)
証人「井上さんと2人で協議した。(井上さんは)『自分はやらない方がいいと思う』と言い出した。Mさんに顔を見られたからです」
弁護士「どう思った」
証人「井上さんは真実と違うことを言ってるなと思いました」
弁護人「なぜ」
証人「私の記憶では(私と井上さんは)終始一緒に行動しているんです。(井上さんの)5メートル後ろにいた私がMさんを見かけてないのに、井上さんがMさんに顔を見られたというのはおかしい。井上さんは実行したくないと考えているなと思いました」
(略)
弁護人「その時、何で井上さんの話を受け入れたのかよく分からないんだけど」
証人「私がお人よしだった。甘かったんじゃないですか」


■第213回公判

弁護人「井上(嘉浩被告)は『尊師から携帯電話に連絡があって、お前は実行に向かない。補佐しろと言われた』と言っているが」
証人「まゆつば。創作だと思っています。地下鉄サリン事件でも、井上さんは『外された』と言っているが、解散の指示を出すなどしている」
(略)
弁護人「ポアの実行行為をした時に昇進する事例のことですが」
証人「この時だけではないですか」
(略)
弁護人「山形さんが、3万円をあなたからもらったと、(Mさん襲撃の)報酬のように言っているが」
証人「認識の違いですから。尊師の部屋を出てから渡しました。活動資金のつもりで渡した。報酬としてなら、3万円はみみっちいですよね」

「VXの効果に興奮した」

 午後1時15分、再開。
 尋問は、1994年12月1日に松本被告が再度、Mさん殺害を指示した場面に移った。
弁護人「麻原さんから『今度は大丈夫だろう』と言われ、どう思ったか」
証人「本当に大丈夫だろうかと思いました。(略)」
(略)
弁護人「VXの効果が出てうれしかったか」
証人「多分そう思います。正確に言えば、興奮したんじゃないか」
(略)
 新実被告は記憶を呼び覚ますかのように、「うーん」とうなりながら、丁寧な言葉遣いで質問に答えていった。
弁護人「内容は」
証人「青山さんから『Mさんは入院しているが、裁判が続行している』という話があったんですね。尊師が『どうしたらいいのか』と聞かれたので、私は『退院後の、家の(ドアの)取っ手にVXをつければいい』と言いました。前に、井上さんが私に「病室に入ってかければいい」と言ったことも話しました」
弁護人「そうしたら」
証人「尊師から『今後、アーナンダ(井上被告)の決定にミラレパ(新実被告)は口を出すな』と言われたんです」
 (略)
 弁護人はMさん事件で、なぜサリンを使用しなかったのかと尋ねた。
証人「一つには、(略)二つ目は、そこまでの積極性が私に欠けていた。与えられたことはいたしますけど、Mさんをポアしなければいけないという積極的な思いが欠けていたんですね。意義がよく理解できていなかっだからでしょうね」


■第214回公判

弁護人「なぜ、12月30日という時期に指示があったのか」
証人「私の見解を含めて述べますと、当時はMさん、Hさん、小林よしのりさんの件があって、その一環かなと思いました。この時点かどうか忘れましたが、『100人くらい変死すれば、教団を非難する人がいなくなる』とか、『1週間に1人はノルマにしよう』という話を私は山形(明服役囚)さんに言っていました」
弁護人「誰が言い出したの」
証人「尊師です」
弁護人「VXをかければ、どんな結果が発生すると思ったか」
証人「亡くなる可能性はありうると思いました。ただ、確信はなかったですね」
(略)
弁護人「いつまでに実行しろという指示は」
証人「期間の限定はございません。できるだけ早く実践すべきだとは思いました」

襲撃報告に松本被告は「機嫌がよかった」

(略)
弁護人「その後、井上さんと下見に行ったわけですね」
証人「Nさんのマンションの場所を調べたり、近くに空き家がないか探しました」
 尋問は、松本被告が再度、新実被告らに対してNさん殺害を指示した場面に移った。
弁護人「Nさんに関する調査報告は具体的にしたのか」
証人「いえ、具体的にはしていません。『調査を今やってます』ぐらいの話です」
 新実被告の証言によると、実行役について井上被告が「いつものメンバーでいいですか」と聞くと、松本被告は中川被告を外すよう指示したという。
弁護人「指示を聞いてどう思ったか」
(略)
弁護人「95年元旦の(山梨県上九一色村の教団施設周辺でサリンの残留物が検出されたとする)新聞報道を踏まえ、(松本)被告と連絡を取ったことは」
証人「ありません。Nさんどころじゃなかった」
(略)
弁護人「(報道を受け)Nさんの件の続行についてどう思ったか」
証人「無責任なようですが、私が判断すべき問題ではないと」
(略)
弁護人「報告を受けた時の(松本被告の)態度は」
証人「普段通り。機嫌がよかった」
(略)


■第215回公判

「VX事件、みんな納得してやった」

「ポア」を指示した松本被告は、「100人くらい変死すれば、教団を非難する人がいなくなる」と述べたとされる。
(略)
弁護人「分かりやすく言うと、すでに殺人は起こしているので質的には驚かないが、100人という量的な意味で驚いたということですか」
証人「世俗的な意味ではそうです」
(略)
弁護人「VX事件はいくつかあるが、どうも動機が不十分だと思うが」
証人「それなりに意味があって、みんな納得してやっていた。世俗的なこととともに、魂を救済することを考えた。ポアの理念、ヴァジラヤーナの理念があって納得していた」
弁護人「宗教的意味づけをしていたという意味か」
証人「当然です」
(略)
弁護人「95年1月1日の(サリンの分解物検出を報道する)新聞記事がありましたね。教団も大変だったのではないか。麻原さんからサリンやVXを処分するよう指示が出ていたと思うが、Nさんのポアは撤回されなかったのか」
証人「はい。二つ理由がある。一つは私の気が回らなかったこと。撤回するか聞いた方がよかったかもしれない。もう一つはそういうことの決定権が私にはなかったこと。判断すべきは私ではなく、井上(嘉浩被告)さんだった」
 3時、休廷。

「黙秘は教団の方針」

(略)
 弁護人は、新実被告の供述調書と法廷証言の食い違いを指摘した。
弁護人「あなたは第198回公判で、松本サリン事件について『私自身は(裁判官の)殺害まで考えていなかった」と言った」
証人「はい」
弁護人「しかし、平成7(95)年7月7日付調書では、殺害する意図があったと述べている」
証人「(調書は)私の心の弱さ。妥協した」
弁護人「取調官に妥協してそういう調書になったということか」
証人「おっしゃる通りです。取調官に話をしても相手にしてもらえなかった。それ以上言って、責任逃れだとか、偽証しているなどと思われたくなかった」


■第216回公判

「尊師に最終完全解脱を目指してほしい」

(略)
弁護人「第206回公判で池田さんにサリンをまいてみようという話だったが、池田さんを殺害しようということか」
証人「とりあえず、サリンをまいてみようということだった」
弁護人「それは池田さんを殺害しようということか」
 新実被告はしばらく沈黙した後、「サリンの効力次第によってそうなるかも」と答えた。
(略)
弁護人「VXを使った事件すべてで麻原さんの指示があったのか」
証人「はい」
弁護人「殺すという指示があったか疑問だ」
証人「とりあえずVXをかけろ、ということでした」
弁護人「ほかの弟子では、重要な場面で自分の役割を低く証言し、時にはすべてを麻原さんの責任にする人もいますよね」
証人「そうですね」
弁護人「新実さんも麻原さんを逆恨みして、指示がないのに指示があったと言っているんじゃないですか」
 新実被告は苦笑し、「真実は神のみぞ知るということで、ご判断はお任せします」と答えた。
(略)


作成者コメント:
私はこの記事を作成していて、非常に困惑している。
「5年以上対立している被害者の会のN代表を襲撃しました、でも直接のきっかけは説明できません。
計画中に強制捜査の話がでましたが、トップと相談せずに計画を続けました。
攻撃しましたが、N代表は殺害できませんでした。でも後のことはトップも私も特に気にしませんでした」
そんなバカな話をどう考えろ、というのだろうか。供述分析をつかわなくても、えん罪を疑うべき供述である。

しかし、裁判開始から7年以上たったこの時点でそんなことをいう必然性はどこにもない。ほかの実行犯の供述とも大筋で一致している。ということは、大筋ではほぼ事実に即している、と断定するしかないのである。
これは、「カルト宗教だから」で説明できない。実行犯たちの認知構造に根本的な問題があったのは事実だが。
もう一つ言えることは、この時点でオウム真理教麻原彰晃松本智津夫)の社会的地位の崩壊は99%決定していた、ということである。企業でいえば超がつくほどの乱脈経営である。そういうしかない。あとは、どのような形で崩壊するか、という点だけである。