『梶村秀樹著作集』完全復刊をめざす会・第6支部[ハンバンパク!!!]

名は体をあらわす。伝説の歴史家・梶村秀樹先生(1935年~1989年)の著作集の完全復刊をめざす会です。ほかにも臨時でいろいろ。

『アンナ・カレーニナ』第五編

「アンナ・カレーニナ」5-26~5-33(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二六[#「二六」は中見出し]「え、どうだった、カピトーヌイチ?」誕生日の前の散歩から帰ってきて、高い背のてっぺんから少年を見おろして、にこにこしている年とった玄関番に、襞《ひだ》の入った袖なし外套を渡しながら、楽しげに頬を赤…

「アンナ・カレーニナ」5-21~5-25(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]二一[#「二一」は中見出し] カレーニンは、ベッチイやオブロンスキイとの話から、人が自分から求めているのは、妻を解放して、自分の存在で彼女を悩ませないようにすることであり、また妻自身もそれを望んでいることを知って以来、すっかり…

「アンナ・カレーニナ」5-16~5-20(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一六[#「一六」は中見出し] レーヴィンが二階へあがったとき、妻は新しい銀のサモワールのそばに、新しい紅茶セットを前にして坐っていた。そして、アガーフィヤを小さなテーブルの前に坐らせ、紅茶さえ注いでやっていた。彼女は、互にたえ…

「アンナ・カレーニナ」5-11~5-15(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]一一[#「一一」は中見出し] アトリエの中へ入ると、画家のミハイロフはもう一度客を見まわして、さらにヴロンスキイの顔、ことにその頬骨の表情を、自分の想像の中へとり入れた。彼の芸術家的感情はたえまなく働いて、素材を蒐集していたに…

「アンナ・カレーニナ」5-06~5-10(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#5字下げ]六[#「六」は中見出し] 結婚の儀式が終り、番僧は会堂のまんなかにあたる聖書台の前に、バラ色の小さい絹のきれを敷いたとき、コーラスは技巧をこらした複雑な賛美歌をうたいはじめた。それは、バスとテノールが、互に交錯する仕組みになっ…

「アンナ・カレーニナ」5-01~5-05(『世界文學大系37 トルストイ』1958年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#2字下げ]第五編[#「第五編」は大見出し] [#5字下げ]一[#「一」は中見出し] シチェルバーツカヤ公爵夫人は、もうあと五週間しかない大斎期《だいさいき》までに、結婚式を挙げるのは不可能と見なした。というのは、したくの半分もそれまでに…